セールをしないのに2年で10億円。予約販売で先に集めてからつくる5手順

予約販売とは|セールなしで2年10億円。先に集めてからつくる5手順

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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて

予約販売とは、売る日を先に決めて注文を受けてからつくる売り方です。
在庫を積んで値引きで押し出す売り方とは、順番がちょうど逆になります。

まず、事実からお伝えします。
セールを一度もせずに、2年で10億円以上を売った会社があります。

アパレルブランド「nairo」を運営する、gf.X株式会社です。
2026年9月4日に公開された対談記事が、出発点になります。

そこで、代表の杉山太士さんが設計を語っていました。
値引きをしない理由が、はっきり示されています。

しかも、この会社はモールにも出店していません。
つまり、値引きとモールの両方を使わずに、10億円を超えたことになります。

予約販売とは何か、いま何が起きているのか

nairoは、いつでも買える店ではありません。
売る日を、月に2回だけ開けています。

予約会は「月初と月末に5〜6日間ずつ」です。
そのうえで、注文をいただいてから生産に入ります。

納品は「1か月半から2か月先」になります。
つまり、お客様は1か月半以上、待つことになります。

普通に考えれば、これは弱点にしか見えません。
ところが、この待ち時間が値引きの代わりに働いています。

なぜなら、待つあいだ、お客様はそのブランドを考え続けるからです。
予約販売とは、時間を味方にする売り方でもあります。

手順1 売る日を、月に2回だけ決める

まず、いつでも買える状態をやめます。
24時間365日の売り場は、一見すると機会損失がありません。

しかし、いつでも買えるものは、いつまでも買われません。
そこで、売る窓を数日に絞ります。

日付が決まると、その日に向けて人が集まります。
その結果、集める仕事と売る仕事が、はじめて分かれます。

手順2 つくる前に、注文で数える

次に、生産の順番を入れ替えます。
在庫をつくってから売るのでは、ありません。

注文をいただいてから、その数だけつくります。
nairoの公式サイトにも、受注生産で大量廃棄を出さない方針が書かれています。

実は、この判断は業界全体の数字とも噛み合います。
環境省のサステナブルファッション特設ページに、数字が出ています。

2024年に約35億着の衣服が供給されました。
一方で、1年間1回も着られていない服が、一人あたり約24枚あります。

さらに、年間約50万トンが焼却・埋立処分されています。
つまり、つくりすぎた分が、着られないまま捨てられています。

だから、在庫リスクは環境負荷と同じ形をしています。
先に注文で数えれば、この両方が同時に減ります。

そして、これは「売ってから、つくる」と同じ順番です。
予約販売は、その順番を制度にしたものだと言えます。

手順3 値引きの代わりに、待ち時間を渡す

セールをやめると、多くの会社は打ち手を失います。
しかし、nairoはやめた分を別のもので埋めました。

創業初期の予約会で、こんなことが起きています。
初回は30〜50件の注文を想定していたそうです。

ところが、実際には500件ほどの注文が入りました。
想定の10倍です。

しかも、この時点で値引きは1円もしていません。
ディレクターのりぃさんは、姿勢を続けたいと語っています。

ちなみに、この会社はモールにも出ていません。
その結果、手元に残るのは名簿と関係だけになります。

手順4 声が毎日入る窓を、1つ開ける

ここが、いちばん地味で、いちばん効きます。
nairoには、お客様の声が毎日入る窓があります。

毎日チャットで問い合わせやリクエストが届く状態です。
そのうえで、届いた要望をそのまま形にしています。

公式アプリをつくった理由が、まさにそれでした。
公式の情報を見逃さずにすむ場所がほしい、という声が出発点です。

なぜなら、SNSはフォローしていても情報が届かないからです。
だから、届く場所を自分でつくった、という話になります。

手順5 買った人が語る場を、自社の中に置く

最後の1手が、いちばん大きい設計です。
nairoの公式サイトには「Style Book」という場所があります。

お客様が日々のコーディネートを投稿し、互いに見つけ合う場です。
つまり、買った人の言葉が、次のお客様の入口になっています。

しかも、この場は会社がつくった広告面ではありません。
お客様が自分の言葉で置いていく、記録の集まりです。

広告ではなく、先に買った人が語っています。
これが、1人の熱中が100人の推し活を生む構造です。

数字で見る、予約販売のいま

ここまでの数字を、並べておきます。
2年間で10億円以上、年商8.5億円、Instagramフォロワー16万人です。

予約会は月初と月末に5〜6日間ずつ開かれます。
納品は1か月半から2か月先になります。

初回予約会の注文は約500件でした。
セールは一切なし、モール出店もありません。

一方で、値引き率という数字は1つも出てきません。
代わりに出てくるのは、日付と、待ち時間と、声の量です。

ベルトコンベア理論が示す、予約販売の本当の狙い

拙著『伝説の通販バイブル』の第3章をご覧ください。
章題は「ベルトコンベア理論こそが、経営のカギを握る」です。

売って終わりの直線をつくる話ではありません。
買った人が次の人を連れてくる輪をつくる、という考え方です。

nairoの設計は、この輪がそのまま形になっています。
予約会で日付を決め、受注生産で数え、待ち時間で温度を上げます。

さらに、チャットで声を拾い、Style Bookで語ってもらいます。
つまり、5つの手順が1本の輪につながっています。

ここで、定期購入会員数のような指標が効いてきます。
なぜなら、輪の太さは新規数ではなく、会員数に出るからです。

まとめ|予約販売の次にくる100日

予約販売は、在庫を減らすための技術ではありません。
売る日をこちらで決めて、その日までに人を集める設計です。

ですから、今日できることは1つで十分です。
来月、1品番だけ「予約会」と名前を付けてください。

そのうえで、売る日を2日、先に決めます。
決めた瞬間から、値引き以外の集め方を考えはじめます。

なお、初月から完売を狙う必要はありません。
何人が待ってくださったかを、数えるところから始めます。

集めて売って終わる直線ファネルではありません。
名簿に入れて100日通っていただく、同心円ファネルです。

1人の熱中が、100人の推し活を生む。

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ルーチェ代表取締役   年商600億円の上場企業の通信販売会社 で販売企画から債権回収のまで16年経験。 その後、化粧品メーカーの中核 メンバーとして5年マーケティングに参画。 大手エステ系企業の通販ビジネスのサポート で200%売上アップ。 ニュージーランドのシンボルフルーツ企業の 販促支援でレスポンス率を2倍アップ。 某健康食品会社の事業開発及び通販支援で 新規会員数が2,000名増加など、 通販ビジネスと、売れる商品開発のプロ として誰もが知る有名企業の ヒット商品の誕生に多数関わる。 売れる商品を発掘し、ヒット商品に変える 独自メソッド 「ダイレクト通販マーケティング理論」 を提唱。 中小企業から中堅企業をメインに、 企業に眠る“売れる商品”の発掘を数多く サポートしている。 国内の注目ビジネスモデルや経営者に焦点を 当てたテレビ番組「ビジネスフラッシュ」に出演。 また、著書にはベストセラーとなった、 伝説の通販バイブル(日本経済新聞出版社)がある。