単なる製品の販売を超えて
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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて
顧客共創とは、商品をつくる前からお客様と一緒に考える設計のことです。
多くの会社は、逆の順番で動いています。
まず企画会議で仕様を決めます。
次に工場へ発注し、在庫を積みます。
そのうえで広告を出し、買ってくれる人を探します。
しかし、売れなければ値下げが待っています。
実は今週、この順番を裏返した会社の話が公開されました。
出版社が、読者と一緒に服をつくっていたのです。
顧客共創とは何か、いま何が起きているのか
まず、言葉の整理からです。
顧客共創とは、お客様と一緒に商品や体験をつくることを指します。
ところが、ここで多くの会社が誤解をします。
アンケートやレビューの収集を、共創だと思ってしまうのです。
しかし、それは「意見の収集」にすぎません。
顧客共創と収集を分ける線は、はっきりしています。
つまり、つくる前にその人がいるかどうかです。
売った後に感想を聞くのは、収集です。
一方、売る前に一緒に悩んでもらうのが顧客共創になります。
そのため、共創には前提条件がひとつだけあります。
先に人が集まっていることです。
私が「集めて売る」と申し上げているのは、この順番のことなのです。
顧客共創の実例|85万着の出発点は読者会だった
実際の数字を見ていきます。
2026年8月28日、累計販売85万着超の裏側を伝える記事が公開されました。
対象は宝島社の疲労回復ウェア「Recoverypro Lab.」です。
2023年2月の発売から約3年半で、シリーズ累計実売85万着を超えています。
つくったのは、アパレルメーカーではありません。
雑誌をつくっている出版社です。
では、なぜ服の会社ではない会社が売れたのでしょうか。
記事によれば、雑誌『大人のおしゃれ手帖』編集部が動いていました。
なお、50代以上の女性に向けた雑誌です。
さらに、読者会「ミモザ会」と連携しました。
そのうえで、体形やデザインについて意見交換を重ねています。
ここが今日の核心です。
服をつくる前から、着る人が目の前にいました。
普通の会社なら、市場を調査してペルソナを紙に書きます。
ところが同社は、そのペルソナ本人と体形の話をしていたのです。
要するに、想像ではなく実在でした。
この差が、3年半で85万着になりました。
手順1|すでに集まっている名簿を数える
ここから、顧客共創を実務に落とします。
まず、新しく集める前に数えてください。
いま何人と接点があるかを、正確に把握するのです。
メールアドレス、LINE、購入者名簿、名刺。
実は多くの会社が、思っているより多くの人とつながっています。
宝島社にとっての雑誌が、あなたの会社では名簿にあたります。
つまり、輪の中心はもう社内にあるのです。
手順2|上位10名を選び、名前で呼ぶ
次に、購入回数の多い順に並べます。
そのうえで、上から10名だけを選んでください。
ミモザ会の代わりは、この10名です。
なお、人数は少なくて構いません。
むしろ少ないほうが、一人ひとりの言葉が濃くなります。
10名なら全員の声を反映できるからです。
手順3|完成品ではなく、迷っているものを見せる
そして、見せ方を変えます。
共創の入口は、完成品の感想ではありません。
「AとBで迷っています」と伝えることです。
なぜなら、決まったものへの意見は他人事だからです。
一方、迷いへの意見は自分事になります。
ここで、関係の温度がはっきり変わります。
手順4|返ってきた言葉を、1つだけ商品に反映する
さらに、反映の速さが顧客共創を本物にします。
宝島社の例が分かりやすいはずです。
店頭からは「Mだと小さい」という声が上がっていました。
同時に「Lだと丈が長い」という声もありました。
そこで同社は、短期間で「ゆったりM」を投入しています。
多くの会社では、この声は返品理由の欄で終わります。
しかし、同社はそれを商品に変えました。
ちなみに、全部を反映する必要はありません。
まず1つでいいのです。
反映されたと分かった瞬間に、その方は共犯者に変わります。
手順5|反映したことを、必ず全員に報告する
ただし、ここを飛ばす会社が本当に多いのです。
「皆さまの声で、このサイズが生まれました」と伝えてください。
すると、参加していなかった人が次は参加したくなります。
輪は、この報告で太くなります。
なお、報告は長文でなくて構いません。
一言あるかないかで、次の参加率が変わります。
数字で見る、顧客共創のいま
ここで、今週のもう一つの発表を見ます。
2026年8月25日、W2株式会社がEC実態調査2026を公開しました。
対象はEC事業者567社です。
まず、リピート購入割合を見てください。
年商5〜10億円の企業で78.3%、全体では72.9%でした。
次に、CVR(購入率)の中央値です。
年商5〜10億円の企業で10.69%、全体では3.23%でした。
つまり、3倍以上の開きがあります。
しかし、私はこれを広告のうまさだとは考えていません。
着く前からその会社を知っている人の割合が、違うのだと見ています。
実際、定期購入会員数は全体で前年比20.9%増でした。
さらに、売上を伸ばした年商5〜10億円の企業では43.7%増です。
要するに、伸びている会社は輪を太くしています。
なお、AI経由の流入を測る話も同じ構造でした。
集める手段が増えても、着地の設計がなければ落ちるのです。
直線ファネルから、同心円ファネルへ
ここで、ファネルの形の話に移ります。
多くの会社が持っているのは、直線のファネルです。
広告を出し、ページに来て、買って、終わります。
この形だと、売上を伸ばす方法はひとつしかありません。
つまり、左端の入口をお金で広げることです。
一方、宝島社が持っていたのは同心円でした。
中心に読者会があり、その外側に雑誌の読者がいます。
さらに外側には、書店で手に取る人がいました。
ちなみに、2026年4月の同社プレスリリースを見てください。
取り扱い書店は、1,300店舗を超えています。
同心円の強さは、内側が外側をつくるところにあります。
なぜなら、中心で一緒に悩んだ人がいちばん熱心に語るからです。
その言葉が誌面に載り、書店へ並び、外側の輪を広げていきます。
これが、私が申し上げているベルトコンベア理論の形です。
広告費で人を集めるのではありません。
中心の熱で、外側が育っていきます。
まとめ|顧客共創の次にくる100日
最後に、今日お伝えしたかったことをひとつだけ。
商品より先に、人を集めておくことです。
宝島社は、服をつくる会社ではありませんでした。
読者を持っている会社でした。
だから、読者が本当に困っていることに応えられたのです。
そして、3年半で85万着になりました。
もし順番が逆であれば、この数字は生まれていません。
あなたの会社にも、名簿があります。
まだ会にはなっていないかもしれませんが、人はもういます。
そこで、次の商品をつくる前に10名へ聞いてみてください。
「いま、何に困っていますか」と。
その答えが、次の設計図になります。
そのうえで、買ってくださった方との100日が始まります。
1人の熱中が、100人の推し活を生む。
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