「売上は伸びているのに翌年落ちる」を防ぐ顧客維持率起点のリピート通販CRM

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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて

稼働顧客数と顧客維持率を軸に、LTV偏重の落とし穴を解説します。
LTVは10年で±10%しか動かない一方、売上を大きく動かすのは稼働顧客数です。
通販の一次情報をもとに、既存顧客を優良顧客・ファンへ育てるリピート通販CRMの設計手順を、
ファネル設計士の視点でまとめました。

「今期も新規は取れている。なのに、利益が薄い」
多くの通販経営者様から、この声を伺います。

その多くは、稼働顧客数の静かな減少が原因です。
本記事では、note版とは別の切り口で、経営者が見るべき数字の順番を整理します。

新規の売上が、離脱を覆い隠している

新規顧客の売上には、恐ろしい副作用があります。
それは「既存顧客の離脱を見えなくする」ことです。

稼働顧客は購入頻度の低い顧客から減っていくため、最初は大きなインパクトがない。しかも、新規顧客の売り上げがあるから顧客の減少に気が付けない(CRM研究家・西野博道氏)

出典:ネットショップ担当者フォーラム「LTVが伸びないのにはワケがある! リピート通販がはまりやすい”落とし穴”と、本当に強いCRM構築メソッドを解説」(2023年1月24日/記事広告企画)/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

つまり、新規で穴を埋めている間に、底が抜けていくのです。
しかも新規獲得コストは、年々高くなっています。

穴の空いたバケツに、より高い水を注ぎ続ける。
これでは、いくら売上が立っても利益は残りません。

先に塞ぐべきは、バケツの底、すなわち既存顧客の離脱なのです。

LTVは±10%、動くのは稼働顧客数

LTVは経営の万能指標のように語られます。
しかし、実データはこう示しています。

顧客全体のLTVは10年間でプラスマイナス10%しか変動していない。多くの企業が、プラスマイナス10%しか変動しない数字を追いかけている。だから売り上げが伸びない(西野博道氏)

出典:ネットショップ担当者フォーラム/同上/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

そして売上の構造は、次の式に集約されます。

年商=年間LTV×稼働顧客数。稼働顧客数=前年の稼働顧客数×顧客維持率

出典:ネットショップ担当者フォーラム/同上/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

動きにくいLTVではなく、動く稼働顧客数。そして、それを決める顧客維持率。
ここに経営の舵を切り替えるべきなのです。

見えない敵:1年前に始まっていた離脱

この問題の本質は、時間差にあります。

顧客の離脱は1光年先の星のようなもの。離脱の原因は1年以上前にすでに発生している。売り上げが下がり始めた時には、すでに稼働顧客は2割以上減っているケースが多い(西野博道氏)

出典:ネットショップ担当者フォーラム/同上/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

私たちが戦うべき敵は、競合ではありません。
「気づいたときには2割減っている」という構造です。

この敵に勝つには、結果(売上)ではなく、先行指標(顧客維持率)を見るしかありません。

解決の方向性:3つのKPIと「おもてなし」の可視化

では、具体的に何を見るのか。同記事では、LTVに加えて注視すべき3つのKPIが示されています。

注視すべきKPIは、①顧客維持率 ②稼働顧客数 ③1人あたりのDM配布数。1人あたりのDM配布数は顧客維持率と相関がある(西野博道氏)

出典:ネットショップ担当者フォーラム/同上/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

そして、既存顧客への地道なフォローが売上を戻した実例もあります。

健康食品通販の大手が伸び悩んだ裏には、1回購入したきりで離脱した顧客が多くいた。DM封入を機械化し、ピーク時には毎日10万通ものDMを送った結果、離れていた顧客が復活し、売り上げをV字回復させた(西野氏の取り組み事例として)

出典:ネットショップ担当者フォーラム/同上/ https://netshop.impress.co.jp/node/10518

派手な新規獲得ではなく、地道な関係の維持。これこそが、ファン化の土台です。

なぜ、DMのような地味な接点が効くのでしょうか。
理由は、お客様が求めているのは商品そのものではなく、自分の悩みが解決され続ける安心だからです。

一度でも買ってくださったお客様は、すでに商品の良さをご存じです。
そこへ「あなたを気にかけています」という接点が届くと、関係は途切れずに続きます。

反対に、接点を効率化の名のもとに削ると、稼働顧客数はじわじわと減っていきます。

同記事でも、DMや情報誌といった「おもてなし」のコストを削ると、
稼働顧客数が減り売上を押し下げると指摘されています。

つまり顧客維持率とは、突き詰めれば
「お客様からありがとうをいただき続けられているか」の通信簿なのです。

その通信簿を、感覚ではなく数字で持つこと。
それが、優良顧客・ファンへ育てるCRMの出発点になります。

今日から動ける一手

まず、管理画面の一番上に置く数字を替えてください。
「今月のLTV」ではなく「今月の稼働顧客数と、その前年比」です。

次に、F2転換(初回から2回目への転換)の率を月次で見ます。
離脱は購入頻度の低い層から始まるため、F2転換の低下は最速の警報になります。

拙著『「小さな会社」ネット通販 億超えのルール』でも、
第4章の法則11「定期購入の支持」の法則として、初回から2回目、
そして定期へと関係を育てる設計を重視しています。

集めて、育てて、ファンにする。
その順番を、数字で管理していきましょう。

なお本論点は2026年にも再燃しています。

参考:ネットショップ担当者フォーラム「LTVを重視しすぎる落とし穴。収益が伸びない原因は「財務指標」と「行動指標」のズレにある」(2026年4月20日)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/04/20/15759

まとめ・関連記事

LTVは±10%しか動きません。
売上を動かすのは稼働顧客数、決めるのは顧客維持率です。

新規で穴を埋める前に、既存顧客をファンへ育てる設計へ舵を切りましょう。
関連記事として、当ブログの「NPSでファン化を数値化する」
「同梱物で次も買いたいを設計する」も、あわせてご覧ください。

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ルーチェ代表取締役   年商600億円の上場企業の通信販売会社 で販売企画から債権回収のまで16年経験。 その後、化粧品メーカーの中核 メンバーとして5年マーケティングに参画。 大手エステ系企業の通販ビジネスのサポート で200%売上アップ。 ニュージーランドのシンボルフルーツ企業の 販促支援でレスポンス率を2倍アップ。 某健康食品会社の事業開発及び通販支援で 新規会員数が2,000名増加など、 通販ビジネスと、売れる商品開発のプロ として誰もが知る有名企業の ヒット商品の誕生に多数関わる。 売れる商品を発掘し、ヒット商品に変える 独自メソッド 「ダイレクト通販マーケティング理論」 を提唱。 中小企業から中堅企業をメインに、 企業に眠る“売れる商品”の発掘を数多く サポートしている。 国内の注目ビジネスモデルや経営者に焦点を 当てたテレビ番組「ビジネスフラッシュ」に出演。 また、著書にはベストセラーとなった、 伝説の通販バイブル(日本経済新聞出版社)がある。