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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて
リアル出店とECは、売上を奪い合う関係だと思われがちです。
しかし2026年7月、その常識を覆す事例が報告されました。
催事へのリアル出店をきっかけに、楽天市場の売上点数が例年の約2倍になった陶磁器店の話です。
本記事では、この事例を通販コンサルタントの視点で分解します。
価格競争から抜け出し、リアル出店をEC流入の入り口に変える手順をお伝えします。
事実確認:催事2日間で何が起きたか
まず、報道された事実を確認します。
陶磁器商社のカネ忠は7月5日、楽天市場で販売した直火対応ボウル「each(イーチ)」シリーズなどの売上点数が例年のお買い物マラソンの約2倍の約75点になった。
7月3~4日に開催された「日本製の覚悟店」で「each」をメインに出品。その場で50点が完売し、65件のバックオーダーが入った。
出典:日本ネット経済新聞「暮らしのうつわやさん、リアル出店からEC多数流入 例年のお買い物マラソンの2倍に」(2026年8月1日公開)/ https://netkeizai.com/articles/detail/19404
試作段階のフタを展示したところ、5人から予約申込みがあったと同記事は伝えています。
会場で50点を売り切り、65件のバックオーダーを獲得しました。
さらに催事直後の楽天市場のセールで、例年の約2倍が売れたのです。
リアル出店が「その場の売上」と「EC流入」の両方を生んだことになります。
多くの事業者は、リアル出店を出店料と当日売上の差し引きで評価します。
その物差しでは、この事例の価値は半分しか測れません。
価格競争で利益が消えた過去
この成果は、一朝一夕に生まれたものではありません。
同社は1967年に創業。1970年代にはブライダルギフトとして陶磁器が好まれたが、その後のブライダル市場縮小に伴い徐々にECへ移行。2007年に楽天市場からのオファーを受け出店に至った。
当初は流行品を扱えばある程度売れたが、成長率が落ち着いてからは価格競争に巻き込まれた。
出典:日本ネット経済新聞「暮らしのうつわやさん、リアル出店からEC多数流入 例年のお買い物マラソンの2倍に」/ https://netkeizai.com/articles/detail/19404
売れても利益が残らない状態が2~3年続いたと記事は伝えています。
同じ悩みを抱える通販事業者は、少なくないはずです。
広告費をかけて集客し、セールで値引きして売る。
売上は立つのに、手元にお金が残らない。
この構造のまま規模を追うと、疲弊だけが積み上がります。
同社の決断は思い切ったものでした。
広告をすべて停止して、店舗をリセットしたのです。
そして勉強会で「顧客の意見を聞く重要性」を学び直したと記事にあります。
再建の手順:声で絞り、専門性で発信する
ここからの立て直しに、集めて売る設計の要点が詰まっています。
食器に関するアンケートから「収納場所を取り、増えすぎてしまう」などの声を踏まえ、重ねやすく場所を取らない形状の食器を中心に仕入れを変更。須藤社長が収納のプロ資格を取得し、ユーチューブなどで食器の選び方や収納法についての情報発信を開始した。
出典:日本ネット経済新聞「暮らしのうつわやさん、リアル出店からEC多数流入 例年のお買い物マラソンの2倍に」/ https://netkeizai.com/articles/detail/19404
手順を分解すると、3段階になります。
第1段階は、顧客の声で品揃えを絞ることです。
「収納場所を取る」という悩みを、仕入れ基準に変換しました。
第2段階は、専門性を身につけて情報発信することです。
社長が収納のプロ資格を取得し、食器の選び方を動画で発信しました。
売り込みではなく、役立つ情報で人を集める形です。
第3段階が、セット販売とリアル出店による体験づくりです。
北欧風の湯呑みと茶托のセットが主力商品に育ったと記事は伝えています。
この積み重ねで売上は戻り、月商100万円を超えることも増えたそうです。
コロナ禍にはEC売上が前年同月比2倍となり、現在の売上高は以前比約20%増と報告されています。
リアル出店をEC流入に変える設計図
ファネル設計士の視点で、この事例を設計図に落とします。
リアル出店の役割は、商品体験という最強の接点づくりです。
手に取り、重さを確かめ、作り手と話す体験は、写真では代替できません。
ECの役割は、その熱を受け止める導線です。
検索しやすい店名と商品名、セール時期の設計、バックオーダーの受付がこれにあたります。
カネ忠の場合、催事の直後にお買い物マラソンが控えていました。
リアルで生まれた興味が、検索と購入というECの行動につながったのです。
バックオーダー65件という数字にも注目してください。
在庫がなくても、その場で「次を待つ約束」を取り付けています。
これは催事の売上を、未来のEC売上へ繰り越す仕組みです。
売り逃しを防ぐだけでなく、需要の証拠として次の仕入れ判断にも使えます。
小さな通販が真似るなら、次の3つから始めてください。
1つ目は、お客様アンケートから悩みの言葉を10個書き出すことです。
2つ目は、地域の催事やマルシェの出店条件を1件調べることです。
3つ目は、出店当日にQRコード付きショップカードでECへ誘導する準備です。
その場で売り切ることより、名簿とEC流入につなげることを目的に置きます。
まとめ:リアルとECは分業で強くなる
リアル出店とECは、奪い合いではなく分業の関係です。
顧客の声で絞り、専門性で発信し、リアルで体験を作り、ECで受け止める。
この順番がそろえば、催事の2日間が1か月分の売上を動かします。
まずは商品を手に取ってもらえる場を、1つ探すことから始めてみてください。
関連記事として、催事やポップアップを活用した納得設計、
O2Oの体験型店舗の事例解説もあわせてお読みください。
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