「売って終わり」をやめた楽器店。池部楽器店に学ぶ有料会員の設計

有料会員とは|「売って終わり」をやめた池部楽器店に学ぶ、買う・楽しむ・売る・また買うの設計

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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて

有料会員とは、会費を払って特典を受けるお客様のことです。
ところが、多くの会社は特典の数から考えはじめます。

実は、先に決めるのは特典ではありません。
むしろ、買ったあとのお客様の動きです。

今日は、全国に約30店舗を持つ楽器店の話です。
そして、小さな会社が循環をつくる手順をお伝えします。

まず、結論を先にお伝えします。
有料会員は、売ったあとの動きをつなぐ仕組みです。

有料会員の前に、楽器店で何が起きていたのか

2026年9月24日、W2株式会社が発表を出しました。
池部楽器店が、ECの基盤を刷新したという内容です。

そもそも、池部楽器店は1975年創業の楽器専門店です。
また、渋谷の旗艦店など約30店舗を展開しています。

しかし、同社には長く続く悩みがありました。
リリースには、こう書かれています。

バンド楽器市場のコモディティ化により、商品を並べて販売するだけではお客様に選ばれ続けることが難しくなっていました。
出典:W2株式会社 プレスリリース(2026年9月24日)

つまり、どこで買っても同じ楽器が手に入ります。
そのため、安い店や早い店が選ばれてしまいます。

有料会員「イケベプライム」の中身

そこで、同社が育ててきたのがイケベプライムです。
これは、2023年9月28日に始まった有料会員の制度です。

まず、開始時の会費は月額1,200円でした。
しかも、初回の1か月は無料で試せる形です。

次に、特典は開始時に5つ用意されました。
たとえば、送料無料とポイント1%の上乗せです。

さらに、会員限定の動画がすべて見放題でした。
加えて、オンラインの買取金額が10%上がります。

また、イベントやセミナーの先行応募もできます。
つまり、買ったあとの時間に特典が置かれています。

買う人と売る人が、同じ1人に見えた

一方、私が注目したのは特典の数ではありません。
お客様の動きを、1本の線でつないだことです。

ECの注文者、イケベプライム会員、中古買取の利用者にシングルIDを付与し、同一の顧客として把握できるようにしました
出典:同リリース

たとえば、ギターを買った方がいたとします。
その後、動画で練習し、やがて手放す日が来ます。

これまで、その3つの場面は別々に見えていました。
しかし、今は同じ1人のお客様として見えます。

手放す窓口を、自社の中に置いた

さらに、中古買取のイケベリユースも変わりました。
以前は、査定の依頼がメール中心だったそうです。

そこで、マイページから写真を送る形に改めました。
その結果、相談の件数が大きく増えています。

現在では数千件規模の相談が寄せられ
出典:同リリース

つまり、手放す時にも同じ店に戻ってきます。
だからこそ、次の1本もその店で選ばれます。

売って終わりの順番が続かない理由

では、なぜ売って終わると続かないのでしょうか。
それは、買った瞬間がお別れになるからです。

たとえば、広告で新しいお客様を呼んだとします。
すると、買ったあとは接点がなくなります。

しかも、次に買う時はまた値段で比べられます。
その結果、毎回ゼロから集め直すことになります。

これに対して、同社は動詞を3つ足しました。
買う、楽しむ、売る、また買うの4つです。

実際、担当者はこう語っています。
売って終わる関係からの卒業が、出発点でした。

一度ご購入いただいて終わりという単発の関係から抜け出し、LTVを最大化する視点が必要でした
出典:同リリース(池部楽器店 担当者コメント)

手順1 買ったあとの動きを動詞で書き出す

まず、お客様が買ったあとにすることを書きます。
そのとき、名詞ではなく動詞で並べてください。

たとえば、使う、慣れる、飽きる、買い替えるです。
すると、接点のない段がはっきり見えてきます。

そして、その段こそが他社へ流れる出口です。
だからこそ、有料会員の特典はそこに置きます。

手順2 有料会員だけの中身を1つ置く

次に、楽しむの段に会員だけの中身を置きます。
この店は、レッスンやライブの動画を置きました。

もっとも、小さな会社なら大がかりでなくて結構です。
たとえば、使い方の動画を月に1本で足ります。

手順3 会費の元が取れる特典を決める

そして、会費を払う理由を1つだけ決めます。
この店は、送料がいつでも無料になる形でした。

なぜなら、特典が多いほど伝わりにくいからです。
だからこそ、ひと言で言える特典に絞ります。

たとえば、年に2回買えば元が取れる形です。
すると、お客様は入る理由をすぐに計算できます。

手順4 手放す時の窓口を自社に置く

また、手放す時や買い替える時の窓口を用意します。
たとえば、下取り、お直し、詰め替えの受付です。

なお、最初はメールの受付だけでもかまいません。
ただし、写真1枚で頼める手軽さを目指してください。

手順5 有料会員の番号ですべてをつなぐ

最後に、すべての接点を1つの番号でつなぎます。
つまり、買う人と手放す人を同じ1人として見ます。

もっとも、最初から立派なシステムは不要です。
まずは、名簿に列を1つ足すところから始めます。

たとえば、動画を見た日や相談の日を書き込みます。
そうすれば、次にかける言葉が変わってきます。

数字で見る、池部楽器店の有料会員

ここで、今日の数字を並べておきます。
いずれも、会社が公表している数値です。

まず、池部楽器店は1975年の創業です。
また、全国の都心部に約30店舗を展開しています。

次に、イケベプライムは2023年9月28日に始まりました。
そして、開始時の会費は月額1,200円でした。

さらに、購入ポイントは1%の上乗せです。
加えて、買取の相談は数千件規模に達しています。

売って終わる直線から、回り続ける同心円へ

まず、直線は買った瞬間に線が終わります。
そのため、次のお客様をまた広告で探します。

これに対して、同心円は買ったあとも回り続けます。
楽しんだ方が、次のお客様を連れてきます。

ちなみに、私は著書に仕組みづくりの章を置きました。
『【小さな会社】ネット通販 億超えのルール』の第4章です。

つまり、売り方より先に続く仕組みを置きます。
これが、100日ファン化計画の土台になります。

まとめ|有料会員は売ったあとをつなぐ設計

最後に、今日の要点をまとめます。
有料会員は、特典を並べる制度ではありません。

まず、買ったあとの動きを動詞で書き出します。
次に、楽しむの段に会員だけの中身を置きます。

そして、手放す時の窓口を自社に用意します。
これだけで、売って終わりの線が輪になります。

つまり、買って終わる直線から離れます。
買ったあとも回り続ける、同心円ファネルへ移ります。

そして、いつもの一言で締めます。
1人の熱中が、100人の推し活を生む。

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ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ルーチェ代表取締役   年商600億円の上場企業の通信販売会社 で販売企画から債権回収のまで16年経験。 その後、化粧品メーカーの中核 メンバーとして5年マーケティングに参画。 大手エステ系企業の通販ビジネスのサポート で200%売上アップ。 ニュージーランドのシンボルフルーツ企業の 販促支援でレスポンス率を2倍アップ。 某健康食品会社の事業開発及び通販支援で 新規会員数が2,000名増加など、 通販ビジネスと、売れる商品開発のプロ として誰もが知る有名企業の ヒット商品の誕生に多数関わる。 売れる商品を発掘し、ヒット商品に変える 独自メソッド 「ダイレクト通販マーケティング理論」 を提唱。 中小企業から中堅企業をメインに、 企業に眠る“売れる商品”の発掘を数多く サポートしている。 国内の注目ビジネスモデルや経営者に焦点を 当てたテレビ番組「ビジネスフラッシュ」に出演。 また、著書にはベストセラーとなった、 伝説の通販バイブル(日本経済新聞出版社)がある。