顧客対応を諦めた81.6%。EC担当者の時間を奪う本当の犯人

顧客対応とは|顧客対応を諦めた81.6%。時間を奪う本当の犯人

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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて

顧客対応が後回しになっていませんか。
まず申し上げると、その原因は忙しさではありません。

実は、犯人はデータを整える作業でした。
つまり、売上を1円も生まない前処理です。

今月、その実態が数字になりました。
しかも、待たされたお客様の側の数字も出ています。

そこで本記事では、5つの手順に整理してお伝えします。
なお、数字はすべて出典を添えています。

顧客対応とは何か、いま現場で何が起きているのか

顧客対応とは、お客様からの問いに応える仕事のことです。
ところが、この仕事がいま静かに削られています。

株式会社シナブルが、EC担当者1006名に調査を行いました。
その結果、81.6%が施策や顧客対応を諦めた経験があると答えています。

理由は、データ整備などのノンコア業務でした。
つまり、意志ではなく時間の問題だったのです。

さらに、時間の内訳も出ています。
全体の68.8%が、業務時間の4割以上をデータの前処理に充てていました。

前処理とは、突合・整形・クレンジングのことです。
なお、最も多い層は前処理に6割から8割未満を使っていました。

1日8時間なら、5時間前後が整える作業です。
そのあいだ、お客様はずっと待っています。

手順1 顧客対応の時間を「整える」と「応える」で数える

まず、今週の作業時間を2つに分けて書き出してください。
データを整える時間と、お客様に応える時間です。

前者が半分を超えていたら、そこが最初の課題になります。
なぜなら、感覚では誰も自分の偏りに気づけないからです。

紙1枚で構いません。
むしろ、集計ツールを作り始めると前処理が1つ増えます。

手順2 やめても困らない前処理を1つ決める

次に、整える作業のリストから1つだけ選んでください。
そのうえで、今月は手を触れないと決めます。

やめても誰も困らない作業が、必ず1つは見つかります。
たとえば、毎週作っているのに誰も見ていないレポートです。

3年前に決めた集計フォーマットも、よくある例です。
ちなみに、こうしたものほど静かに時間を食べています。

いきなり全部をやめる必要はありません。
ただし、1つだけは今月中に決めてください。

手順3 顧客対応の返信を1分以内に近づける

そして、浮いた時間は返信の速さだけに使ってください。
内容を良くしようとしないことが、ここでのコツです。

株式会社Channel Corporationが、男女556名に調査しています。
その結果、1分以内の回答で65.5%が信頼感が高まったと答えました。

さらに、68.3%が今後も利用したいと回答しています。
つまり、速さそのものが信頼をつくっていました。

丁寧な長文より、速い一言のほうが効きます。
実際、値引きもキャンペーンも必要ありません。

手順4 よく来る質問の上位5件を定型文にする

もっとも、すべてに1分で返すのは現実的ではありません。
そこで、よく来る質問の上位5件だけを定型文にします。

送料、納期、返品、サイズ、支払い方法。
たいてい、この5つで問い合わせの大半が埋まります。

定型文があれば、その場で貼るだけで済みます。
したがって、速さは体制ではなく準備で作れます。

手順5 速さの効果を、再購入で確かめる

最後に、効果の確かめ方です。
返信の速さを変えたら、再購入率だけを見てください。

同じ調査では、回答の遅れで26.6%が購入をやめていました。
また、19.8%が他のECサイトで購入しています。

合わせて46.4%が、静かに離れている計算です。
ここで大切なのは、この46.4%がクレームにならないことです。

怒って連絡をくださる方には、まだ関係が残っています。
ところが、この方々はただいなくなります。

売上表には「離脱」としか出ません。
だから、原因が前処理にあることに誰も気づけないのです。

数字で見る、顧客対応のいま

ここまでの数字を、もう一度並べます。
まず、81.6%が施策や顧客対応を諦めた経験を持っています。

次に、68.8%が業務時間の4割以上を前処理に充てています。
そして、ツール活用の課題1位も明らかでした。

「管理画面や操作が複雑で分かりにくい」が37.0%です。
一方、待たされたお客様の46.4%が離れています。

それでも、1分以内の返信は65.5%の信頼をつくっていました。
つまり、速さだけが例外的に効いていました。

道具を入れたのに、道具を使う作業が増えている。
つまり、これが今の顧客対応が痩せていく仕組みです。

足す前に外す。『伝説の通販バイブル』が第4章に置いたもの

私は著書『伝説の通販バイブル』を2015年に書きました。
その第4章をまるごと「リピートを妨げる4つの要因を排除する」に充てています。

リピートを増やす方法ではありません。
むしろ、妨げているものを外すほうが先だからです。

多くの会社は、リピートが伸びないと施策を足します。
たとえば、ステップメール、クーポン、LINEの開設です。

しかし、足した分だけ整える作業も増えていきます。
その結果、応える時間がまた削られます。

いま外すべきものは、新しい施策ではありません。
実は、お客様に向く時間を食べている名前のない作業のほうです。

直線ファネルから同心円ファネルへ

ここまでの流れを、1本の線でつなぎます。
まず、前処理に時間を取られて顧客対応が後回しになります。

次に、待たされた方の46.4%が去っていきます。
そのため、母数が減り、また新規を集めにいきます。

そして、集めた分だけデータが増え、前処理も増えます。
つまり、入口を広げるほど中心が痩せていく構造です。

これが直線ファネルの消耗です。
一方、同心円ファネルは逆の回り方をします。

すでにいる方への返信を速くします。
すると、速さが信頼になり、再購入と口コミが生まれます。

中心が太くなれば、外側の輪は自然に広がります。
そのための最初の一手が、1分で返すことでした。

必要なのは、予算ではなく時間です。
そして時間は、作業を外すことでしか生まれません。

まとめ|顧客対応の次にくる100日

顧客対応を諦めているのは、意志ではなく時間の問題でした。
だからこそ、足す前に外すという順番が効きます。

外して空いた時間を、待っている方に向けてください。
そのうえで、100日かけて輪を太くしていきます。

今日は、返せていないメールを1通だけ探してみてください。
その1通の向こうにいる方が、いちばん近くにいるファンかもしれません。

1人の熱中が、100人の推し活を生む。

ここから、顧客共創を実務に落とします。
まず、新しく集める前に数えてください。

いま何人と接点があるかを、正確に把握するのです。
メールアドレス、LINE、購入者名簿、名刺。

実は多くの会社が、思っているより多くの人とつながっています。
宝島社にとっての雑誌が、あなたの会社では名簿にあたります。

つまり、輪の中心はもう社内にあるのです。

手順2|上位10名を選び、名前で呼ぶ

次に、購入回数の多い順に並べます。
そのうえで、上から10名だけを選んでください。

ミモザ会の代わりは、この10名です。
なお、人数は少なくて構いません。

むしろ少ないほうが、一人ひとりの言葉が濃くなります。
10名なら全員の声を反映できるからです。

手順3|完成品ではなく、迷っているものを見せる

そして、見せ方を変えます。
共創の入口は、完成品の感想ではありません。

「AとBで迷っています」と伝えることです。
なぜなら、決まったものへの意見は他人事だからです。

一方、迷いへの意見は自分事になります。
ここで、関係の温度がはっきり変わります。

手順4|返ってきた言葉を、1つだけ商品に反映する

さらに、反映の速さが顧客共創を本物にします。
宝島社の例が分かりやすいはずです。

店頭からは「Mだと小さい」という声が上がっていました。
同時に「Lだと丈が長い」という声もありました。

そこで同社は、短期間で「ゆったりM」を投入しています。
多くの会社では、この声は返品理由の欄で終わります。

しかし、同社はそれを商品に変えました。
ちなみに、全部を反映する必要はありません。

まず1つでいいのです。
反映されたと分かった瞬間に、その方は共犯者に変わります。

手順5|反映したことを、必ず全員に報告する

ただし、ここを飛ばす会社が本当に多いのです。
「皆さまの声で、このサイズが生まれました」と伝えてください。

すると、参加していなかった人が次は参加したくなります。
輪は、この報告で太くなります。

なお、報告は長文でなくて構いません。
一言あるかないかで、次の参加率が変わります。

数字で見る、顧客共創のいま

ここで、今週のもう一つの発表を見ます。
2026年8月25日、W2株式会社がEC実態調査2026を公開しました。

対象はEC事業者567社です。
まず、リピート購入割合を見てください。

年商5〜10億円の企業で78.3%、全体では72.9%でした。
次に、CVR(購入率)の中央値です。

年商5〜10億円の企業で10.69%、全体では3.23%でした。
つまり、3倍以上の開きがあります。

しかし、私はこれを広告のうまさだとは考えていません。
着く前からその会社を知っている人の割合が、違うのだと見ています。

実際、定期購入会員数は全体で前年比20.9%増でした。
さらに、売上を伸ばした年商5〜10億円の企業では43.7%増です。

要するに、伸びている会社は輪を太くしています。
なお、AI経由の流入を測る話も同じ構造でした。

集める手段が増えても、着地の設計がなければ落ちるのです。

直線ファネルから、同心円ファネル

ここで、ファネルの形の話に移ります。
多くの会社が持っているのは、直線のファネルです。

広告を出し、ページに来て、買って、終わります。
この形だと、売上を伸ばす方法はひとつしかありません。

つまり、左端の入口をお金で広げることです。
一方、宝島社が持っていたのは同心円でした。

中心に読者会があり、その外側に雑誌の読者がいます。
さらに外側には、書店で手に取る人がいました。

ちなみに、2026年4月の同社プレスリリースを見てください。
取り扱い書店は、1,300店舗を超えています。

同心円の強さは、内側が外側をつくるところにあります。
なぜなら、中心で一緒に悩んだ人がいちばん熱心に語るからです。

その言葉が誌面に載り、書店へ並び、外側の輪を広げていきます。
これが、私が申し上げているベルトコンベア理論の形です。

広告費で人を集めるのではありません。
中心の熱で、外側が育っていきます。

まとめ|顧客共創の次にくる100日

最後に、今日お伝えしたかったことをひとつだけ。
商品より先に、人を集めておくことです。

宝島社は、服をつくる会社ではありませんでした。
読者を持っている会社でした。

だから、読者が本当に困っていることに応えられたのです。
そして、3年半で85万着になりました。

もし順番が逆であれば、この数字は生まれていません。
あなたの会社にも、名簿があります。

まだ会にはなっていないかもしれませんが、人はもういます。
そこで、次の商品をつくる前に10名へ聞いてみてください。

「いま、何に困っていますか」と。
その答えが、次の設計図になります。

そのうえで、買ってくださった方との100日が始まります。
1人の熱中が、100人の推し活を生む。

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↓↓↓↓
http://luce-consulting.com/

東洋経済オンライン掲載 記事
↓↓↓↓
http://toyokeizai.net/articles/-/125443

ABOUTこの記事をかいた人

株式会社ルーチェ代表取締役   年商600億円の上場企業の通信販売会社 で販売企画から債権回収のまで16年経験。 その後、化粧品メーカーの中核 メンバーとして5年マーケティングに参画。 大手エステ系企業の通販ビジネスのサポート で200%売上アップ。 ニュージーランドのシンボルフルーツ企業の 販促支援でレスポンス率を2倍アップ。 某健康食品会社の事業開発及び通販支援で 新規会員数が2,000名増加など、 通販ビジネスと、売れる商品開発のプロ として誰もが知る有名企業の ヒット商品の誕生に多数関わる。 売れる商品を発掘し、ヒット商品に変える 独自メソッド 「ダイレクト通販マーケティング理論」 を提唱。 中小企業から中堅企業をメインに、 企業に眠る“売れる商品”の発掘を数多く サポートしている。 国内の注目ビジネスモデルや経営者に焦点を 当てたテレビ番組「ビジネスフラッシュ」に出演。 また、著書にはベストセラーとなった、 伝説の通販バイブル(日本経済新聞出版社)がある。