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From:通販プロデューサーの西村公児
自宅の仕事部屋にて
トライアルモデルで売上は伸びるのに現金が減る。
その原因は投資回収シミュレーションで検証すると見えてきます。
980円トライアルの粗利構造、1回あたり約700円のフルフィルメント費用、
隔月定期による改善まで、トライアルモデルの利益設計をファネル設計士が手順で解説します。
売上は毎月伸びている。なのに、現金は減っていく。
トライアルモデルを運用する通販企業から、そんなご相談をいただくことがあります。
広告をかけるほど苦しくなるとしたら、原因は集客ではなく構造にあります。
本記事では、公開されたばかりの投資回収シミュレーションの試算を手がかりに、
トライアルモデルの利益設計を見直す手順を解説します。
広告をかけるほど現金が減るのはなぜか
まず、順に見ていきます。
トライアルモデルとは、初回980円などのお試し商品で集めて、定期購入で回収する手法です。
ネットショップ担当者フォーラムの連載で、川部篤史氏(D2Cエキスパート協会認定プロフェッショナル)が試算を公開しました。
本品価格は4980円、トライアル商品は980円。トライアルの顧客獲得コスト(CPA)は3000円と仮定します。この時点でトライアルのROAS(広告費用対効果)は約30%で、初回は赤字です。
出典:ネットショップ担当者フォーラム「売れるほど赤字?『980円トライアルモデル』の罠。『投資回収シミュレーション』で検証する投資回収の現実」(川部篤史氏・2026年7月8日公開)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/07/08/16180
定期引き上げ率31.8%、F2継続60%、以降75%→80%→85%→90%、F6以降95%という仮定です。
実務では良好といえる水準ですが、結論は厳しいものでした。
結論から言うと、この条件で投資は回収できません。
出典:同記事(川部篤史氏・2026年7月8日公開)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/07/08/16180
新規獲得の初回赤字を、続く定期の粗利で埋めきれない。
だから売れば売るほど、先行投資だけが積み上がります。
これが、広告をかけるほど現金が減るカラクリです。
利益を削る3つのコストを分解する
そのため、ここから具体的に確認します。
同記事は、回収を阻むコストを具体的に分解しています。
第1に、フルフィルメント費用です。
ピッキング、梱包、資材、配送を含めると、1回あたり約700円のコストがかかるケースは少なくありません。この金額は粗利に対して非常に大きな割合を占めます。
出典:同記事(川部篤史氏・2026年7月8日公開)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/07/08/16180
第2に、電話対応などのコミュニケーションコストです。
解約を電話のみで受け付ける運用は、人的対応の費用を押し上げます。
第3に、決済コストです。
クレジットカードなら約3%が毎回発生し、後払いなら1件あたり約100円程度の定額です。
原価率20%の本品4980円から、これらが毎回差し引かれます。
1回あたりに残る利益は、想像以上に薄いのです。
さらにトライアル商品自体も、同梱物やフォロー施策を厚くするため、
コスト高になりがちだと同記事は指摘しています。
回収できないモデルを回収可能に変えた設計変更
さらに、もう一歩踏み込みます。
注目すべきは、価格も商品も変えない改善策です。
たとえば、30日分の定期ではなく60日分の定期にすることで、売り上げは単純に倍になりますが、配送や梱包、決済といったコストは1回分で済みます。その結果、限界利益が大きく改善されます。
本品1か月分4980円を2か月分9960円で試算した場合、投資回収が35か月で可能になる結果に
出典:同記事(川部篤史氏・2026年7月8日公開)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/07/08/16180
回数に比例して発生する配送・決済コストを、お届け間隔の設計で半分にする。
それだけで、回収不能だったモデルが35か月回収に変わります。
後払いの定額コストは単価が上がるほど比率が下がるため、複数月定期との組み合わせも有効とされています。
ファネル設計士の視点では、これは「集める装置」と「売る装置」の分離です。
980円の入口は見込み客を集める装置にすぎません。
利益を生む装置は、2回目以降の粗利構造の側にあります。
トライアルモデルの改善は、入口の値付けではなく、
ベルトコンベアの2周目以降を設計し直すことから始まります。
自社でトライアルモデルを検証する手順
また、次の点も押さえておきます。
手順は4つです。
手順1.自社のCPA・定期引き上げ率・F別継続率を実数で書き出します。
ここまでを、いったん整理します。
手順2.1回あたりの配送・決済・対応コストを合計します。
手順3.顧客1人あたりの累積損益を月ごとに並べ、黒字転換月を確認します。
そのうえで、次に進みます。
手順4.回収が長すぎる場合、容量・お届け間隔・決済手段の順で設計を見直します。
このとき大切なのは、平均値ではなく実数を使うことです。
直近12か月の受注データから、F別の継続人数をそのまま拾ってください。
希望的な数字で作った回収表は、地図としての役割を果たしません。
また、回収表は一度作って終わりではなく、月に1回の更新をおすすめします。
CPAや継続率は季節や媒体で動くため、設計図も定点で見直す必要があるからです。
数字が動けば、打ち手の優先順位も変わります。
EC事業は、モデルをまねるだけでは成立しません。構造を理解し、自社に合わせて設計することで初めて成立します。
出典:同記事(川部篤史氏・2026年7月8日公開)/ https://netshop.impress.co.jp/e/2026/07/08/16180
まとめ
したがって、ここを整理しておきましょう。
トライアルモデルの罠は、980円という価格ではなく、1周ごとの粗利構造に潜んでいます。
投資回収シミュレーションは、広告を踏む前に描くべき数字の設計図です。
広告費を増やす判断の前に、まず自社の回収表を1枚作ることから始めてみてください。
関連記事では、定期購入の継続設計やLTVの考え方も解説しています。
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東洋経済オンライン掲載 記事
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